誰の慣らし保育?
副園長 松本 伸一
新年度が始まり、間もなくひと月が経過しようとしています。この時期は全国のこども園、幼稚園、保育園で多くのお子さんが入園し「慣らし保育」が始まり、新しい環境での生活をスタートさせています。特に、お母様方におきましては自分の命を懸けて無事に産み、育てている大切な我が子を他所の人に託して働くのですから、この「慣らし保育」をスムーズに進めて終わらせたいと切に願っていることと思います。
しかし、現実はそううまくは行きません。慣らし保育はまさに慣れていくために時間をかけてゆくのです。お子様にとっては、一番安心できる親と家から離れ、知らない場所、知らない子、知らない大人がたくさんいる場所にいつまで待つのか分からない状況で親を待つ切ない思いをします。皆様にとっても不安や忍耐が求められる行為だと感じているのではないでしょうか。慣らし保育はお子様に慣れてもらうという意味もありますが、私たち職員がこの期間でお子様のことをよく知り、よく観察し、よく保護者からの話を聞き、如何に心地よく過ごしてもらう準備をするための慣らし保育という意味もあります。「子どもが大人に慣れてくださいね」と求めるのではなく、「私たち自身が子どもに慣れる」と常々思いながらこの期間を過ごしています。
「子どもが慣れていないのは我々が子どもに慣れていないからです。早く慣れることを求めてはなりません。目が覚めたら火星に一人でいたくらい大人側はそれくらい子どもが不安な心持でいると想像せよ」と先輩諸氏に言われたものです。
慣らし保育は私たち大人のためにあるのではないでしょうか?この期間を通してどれだけお子さんの事を知って行くのかを専門職として求められています。皆さんからお子さんの話を聞かせていただき、お家での様子を聞き、保育に活かしながらこども園での様子をお伝えできることが大切だと考えています。一方で皆さんにも積極的にお子さんの事を教えていただきたいのです。親と保育者が仲良くやり取りができる姿で子どもは安心できるのではないでしょうか。「お母さん、お父さんが楽しそうに話をしているこの人は大丈夫なのだ」と思えるようかかわりを深めたいですね。